【京都珈琲案内】第9回:京都における珈琲の新しいブーム

【京都珈琲案内】第9回:京都における珈琲の新しいブーム

【京都珈琲案内】第9回:京都における珈琲の新しいブーム

珈琲には、時代によってブームが到来する。

 

しかしひとくちにブームと言っても、じつはその種類は大きく「味覚(消費者側)」と「提供方法(お店側)」の2つに分けて考える必要がある。「味覚」についての現在のブームは、過去に何度かコラムでも触れている「サードウェーブ」だ。ただ、こと京都においては、その歴史的な味覚の背景から、必ずしもサードウェーブに大きな影響を受けているわけではないことは過去のコラムでも述べた。

 

一方、「提供方法」の現在のブームについては第5回でも述べた通り、京都では小型焙煎機の導入による自家焙煎珈琲店が増加していることが言える。正直、私としてはこれ以上の動きはしばらくないだろうと予想していた。しかし、最近これとはまた別の提供方法のブームが京都で巻き起こりつつあり、このコラムにて触れざるを得なくなってしまった。そこで今回は、その新しいブーム「ホステル併設型コーヒースタンド」と「即焙煎即持ち帰り型珈琲豆店」について紹介していきたいと思う。

1.ホステル併設型コーヒースタンド

最近京都にユースホステルが増加している。その理由については、京都にお住いの方々なら想像に難くないだろう。まさしく、外国人観光客の増加が原因である。

DRIP&DROP
The NEXT DOOR, lower east nine hostel

そして最近のホステルはコーヒースタンドと併設されているところが非常に多い。これらのホステルでは「あらゆる境界線を越えて人々が集える場所」というようなイメージで、宿泊者だけでなく、地域に暮らす人、街で働く人、その場自体に興味がある人が集うきっかけとして、コーヒースタンドを併設させているのではないかと、私は推測している。一躍そのスタイルが京都で名を馳せたのは富小路三条の『DRIP&DROP』で、その後は東寺の『The NEXT DOOR, lower east nine hostel』など、観光の中心地を軸に展開されている模様だ。

2.即焙煎即持ち帰り型珈琲豆店

これまで、珈琲豆の焙煎はいくら早くても15分少々かかっていた。そのため豆屋では、焙煎済の豆を販売するか、生豆を販売するか、という2つの販売形態しか存在しなかった。しかし、ここ最近の焙煎機の目まぐるしい技術進歩により、超高速で珈琲豆を焙煎することができるようになった。そしてその超高速型焙煎機を導入して「注文後すぐ焙煎、すぐ持ち帰れる」ことを売りにしたお店が、ここ最近京都でぽこぽことオープンしはじめたのである。代表的なところでいうと、西院にある『西院Roasting Factory』、錦市場にある『緑の豆京都焙煎所』、千本丸太町にある『ニシナ屋珈琲千本丸太町焙煎所』の3店舗だ。

西院Roasting Factory
緑の豆京都焙煎所
ニシナ屋珈琲千本丸太町焙煎所

これらのお店の焙煎機で共通しているのは、どの店舗も「熱風型焙煎機」を採用しているところだ。そもそも珈琲豆の焙煎方式は大きく「直火型」「半熱風型」「熱風型」という3つに分けることができ、同じ豆を使っていても焙煎方法が違えば風味はずいぶんと異なってくる。どの方式も「豆に火を加える」というところは同じなのだが、違いについてはざっくり以下の通り簡単に覚えていただけば結構かと思う。珈琲豆を購入する際、どの方式で焙煎されたものか、というのも大きなポイントに一つになるので、これを機に是非とも覚えていただきたい。

直火型は珈琲豆に直接火が当たる都合上、ややスモーキーで個性が引き出た味わいになる。燻された香りが好きな方や、煙草を吸う方には好ましいものとなるだろう。ただ、直火型焙煎機は火力の調整が非常に難しく焼きムラが出やすいため、導入しているお店は少ない。直火型焙煎機を導入している美味しいお店としては、紫竹にある『珈琲工房4331』へまず訪れてほしい。珍しいピーベリー(※)も常時沢山置いているので、そういった意味でもお勧めしたい。

 

※ピーベリー・・・通常、珈琲豆は実の中に半円球のものが2つ入っているので「フラットビーン(平豆)」と呼ばれる。一方で、実の中に円球の豆が1つしか入っていないものがあり、これをピーベリー(丸豆)という。ピーベリーは豆全体の3~5%しかなく、ピーベリーのみを集めたものが高値で取引される場合もある。

珈琲工房4331

半熱風型は、直火型よりは火力の調整が扱いやすく、焙煎家のオリジナリティも出しやすいということで、多くの中小規模の自家焙煎珈琲店が導入している焙煎方式だ。

 

そして熱風型は、熱風で焙煎するので豆の脱水力が強く、短時間でムラが少なく上品に焼きあがることが特徴で、特にスペシャルティコーヒーの浅煎り~中煎りに向いている焙煎法だ。熱風型の焙煎機を採用しているお店としては、「京風」として銘打って焙煎している北大路の『伊藤珈琲』と北山の『あおい珈琲』あたりが有名だろう。

伊藤珈琲
あおい珈琲

そして今般この熱風型で、焙煎時間が更に大幅に短縮された焙煎機が群馬で開発された。それこそが『緑の豆珈琲焙煎所』『ニシナ屋珈琲千本丸太町焙煎所』で採用されている、アイ・シー電子工業製のトルネードキングだ。注文して約5分でほぼ全ての焼き方で焼き上げることができる。なお、『西院Roasting Factory』では英国製のFrancinoの小型高速熱風型焙煎機を採用しており、こちらもかなりの短時間で焼き上げることが可能だ。

 

以上の2つのブームに共通して言えるのは、珈琲を店で飲む派の人にとっても、自宅で淹れる派の人にとっても、珈琲の存在がより身近になったということだ。私としてはこの2つのブームについて、環境がそうさせたのか技術がそうさせたのかだけの違いであって、根本は同じものだと思っている。珈琲のブームは時に革新的である。しかし、ブームがあるからこそ、「これまで」の珈琲の素晴らしさも併せて再発見できる。京都における「現在」の珈琲と「これまで」の珈琲が融合し、京都によりよい珈琲文化が発展していくことを、私は願ってやまない。

【おしらせ】

このたび、私がうたっておりますバンド「閑話休題」が、「ベースとガットギターとうた」というアコースティックデュオとして再始動することになりました。ついては、12月に京都の木屋町で復活公演イベントをおこないます。新曲をたくさんこしらえ、デモ音源も準備いたしました。ぜひお越しいただければと思いますのでよろしくお願いいたします。

 

『閑話休題 復活公演 京都編』

日 時:2017年12月8日(金)

時 間:OPEN 18:30 / START 19:00

場 所:三条木屋町DEWEY(http://kiyamachi-dewey.com/

出 演:閑話休題 / 宮内大×鈴木克行 / 永尾蕗子 / 榎木にれ / 北川知早

入場料:2,000円(1Drink込)

参 照:閑話休題ウェブサイト(http://kanwakyudai.com

※チケット取り置きを希望される方は、DEWEYまでご連絡をお願いいたします。

 

今回ご紹介したお店

DRIP&DROP

住所 京都府京都市中京区富小路通三条下ル朝倉町531

営業時間 11:00~22:00

定休日 無休

 

The NEXT DOOR, lower east nine hostel

住所 京都府京都市南区西九条東比永城町65

定休日 無休

 

西院Roasting Factory

住所 京都府京都市右京区西院日照町60-1 武藤商店 南側 1F

営業時間 10:00~18:00

定休日 日曜日

 

緑の豆京都焙煎所

住所 京都府京都市中京区中魚屋町478

営業時間 11:00~19:00

定休日 水曜日(祝日は営業)

 

ニシナ屋珈琲千本丸太町焙煎所

住所 京都府京都市上京区竹屋町通千本東入主税町984

営業時間 10:00〜18:00

 

珈琲工房4331

住所 京都府京都市北区紫竹上竹殿町1-2

営業時間 11:00~21:00

定休日 月曜日(祝日も含む)

 

伊藤珈琲

住所 京都府京都市北区小山北上総町43-3

営業時間 7:00~19:30

定休日 火曜日

 

あおい珈琲

住所 京都府京都市左京区下鴨前萩町5 木村ビル 1F

営業時間 11:00~18:00

定休日 火曜日

WRITER

植島 潤
植島 潤

京都のロックバンド、「閑話休題」のヴォーカル兼ギター。2017年12月、Ba.袴田有紀と「ふたりのうたとガットギターとベース」というアコースティックバンド編成で約2年ぶりに活動再開。珈琲に結構くわしく、素人ながら自家焙煎やネルドリップ、ラテアートもこなす。日々の珈琲屋巡りやおうちカフェの様子を記録したブログは、京都を中心とする珈琲店や雑誌社などから一目置かれているらしい。でも当方はバンドのほうで注目されたいの。

【閑話休題Official Website】http://kanwakyudai.com
【京都珈琲案内】http://ueshima.blog.jp

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EDITOR

岡安 いつ美
岡安 いつ美

昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。

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