たとえ食えなくても、ライブを撮るのはやめられない。カメラマン井上嘉和&岡安いつ美、それぞれの続け方〈editor’s voice〉

たとえ食えなくても、ライブを撮るのはやめられない。カメラマン井上嘉和&岡安いつ美、それぞれの続け方〈editor’s voice〉

たとえ食えなくても、ライブを撮るのはやめられない。カメラマン井上嘉和&岡安いつ美、それぞれの続け方〈editor’s voice〉

京都のカルチャーを発信するメディア「ANTENNA」、そして姉妹サイトである「PORTLA」。その編集部メンバーの声を、外部との対談を通じて伝えていく年刊シリーズ〈editor’s voice〉が始まります。

 

2022年は「つくる、のこす、ひろめる」をテーマに、ANTENNA編集長・岡安いつ美、副編集長・峯大貴、PORTLA編集長・堤大樹それぞれの対談記事をお届けします。第1弾は、カメラマンとしても活動する岡安と、写真の先輩である井上嘉和さんの対談。


「先輩に恵まれたから、こんなに長く音楽と関われたのかな」

 

ANTENNA編集長でもあり、ライブ撮影を中心にフリーランスのカメラマンとしても活動する岡安いつ美。あるとき彼女がTwitterでつぶやいた言葉に目が留まった。

 

後日、本人に「先輩って、たとえばどんな人ですか?」と尋ねてみると、その一人として関西エリアで活動する井上嘉和さんの名前が挙がった。ライブ、演劇、即興を撮り続けて25年。弟子入りもせず、スタジオにも属さず、自らのやり方でアーティストと向き合い続けてきたカメラマンだ。「井上さんにもらった言葉がなければ今の私はないんです」と彼女は言う。

 

年を重ねるごとに、“好き”なだけでは続けられない難しさを感じる。お金のこと、時間のこと、キャリアアップのこと。いろんなことを天秤にかけて優先順位を考える。二人はどうやって、好きなことを手放さずに今までやってこれたんだろう。そして、それぞれ先輩のどんな背中を見てきたのだろう?

 

井上嘉和

カメラマン。「身の回りで鳴る音、表現の定着」をコンセプトに、ライブ撮影、舞台撮影、広告撮影まで表現に関わる記録を行っている。

Twitter

 

岡安いつ美

ANTENNA編集長。撮影をメインに、ライター、編集等ANTENNAでの役割は多岐に渡る。2018年にカメラマンとして独立し、京都を中心に活動するアーティストのライブ撮影をライフワークとする。

Twitter / Web

バンドより先で待ち構えていないと

中川裕貴(撮影:井上嘉和)
(C)岡安いつ美
──

岡安さんから「井上さんにもらった一言のおかげで今の自分がある」と以前伺ったことがあります。どんな言葉がカメラマンとしての指針になったのか、そのときのエピソードを聞かせてください。

岡安

京都のライブハウス〈CLUB METRO〉での、ジム・オルークとキツネの嫁入りの対バンイベントだったかな。そこで井上さんを見かけて話しかけたのが知り合ったきっかけです。現場で他のカメラマンに会うことってほとんどないし、井上さんの名前は撮影クレジットでたびたび目にしていたので、「これは話しておきたい!」と思って声をかけたんです。

井上

そのときのこと覚えてますよ。僕も岡安さんの名前は知っていました。カメラマンはみんなクレジットをチェックして、「これ撮ったのはどんな人かな」って考えるよね。

岡安

帰りしなに細い通路で立ち話をして、「どうしたらもっと写真がうまくなれますか」みたいなぼんやりした質問を投げかけたら、「まずはたくさん現場に行くといいよ。あとは、アーティストと同じスピードで成長していくんじゃなくて、先に行って待ち構えてるくらいの気持ちでいないとだめだよ」って。

井上

若いカメラマンが、ずっと撮ってるバンドがメジャーデビューしたとたんに撮らせてもらえなくなるのをよく見ていたので……。メジャーに行くと本人たちだけじゃ決められないことが出てきますよね。「このカメラマンいいんですよ」ってバンドが言ったときに、レコード会社から「ああ、いいんじゃない?」って言ってもらえるようにならないと。そういう意味で、「先に行って待ち構えとくのは大事だよ」みたいな話をしました。

岡安

当時はカメラマンとして伸び悩んでる感覚があったんですけど、あの言葉で道がパーっと拓けた気がしたんです。バンドと一緒に経験を重ねていけばカメラマンとして成長できると思っていたけどそうじゃなくて、自分が欲しい仕事、自分がなりたい姿を思い描いて向かっていけば、バンドの成長に合致してずっと一緒にやっていけるって。私にとって指針となる言葉でした。あの言葉をもらってなかったら、今の自分はないと思います。

井上

岡安さんに話したことは、僕が先輩から言われた言葉ではなく自分の経験から感じたことです。僕には先輩とか師匠みたいな人がまったくいないんですよね。一人で勝手に現場行って撮ってたらいつのまにかこんなふうに……なのであんまり似たタイプのカメラマンがいないんです。

「君もこっち側で金にならんことばっかやってんやろ」

──

師匠がいないのは、写真の世界ではめずらしいことなんじゃないでしょうか。どんなきっかけで写真を始めて、ライブを撮るというライフワークにどう繋がったのか、そのあたりをお聞きしたいです。

井上

デザイン系の高校を出てるんですけど、卒業する前にちょっと病気をしてしまい……。デザイナーは仕事がきつい印象があったので、病み上がりだと不安もあって、方向転換して写真の専門学校に進んだんです。

 

ライブを撮るようになったきっかけは、話すと長くなるんですが、心斎橋でP-shirtsの中島くん*1っていうバンドマンに声をかけられたことで。服屋で店員さんに写真を見せながら話してたら、それを横で見ていた中島くんが声をかけてくれたんです。それをきっかけに彼らのライブを見に行ったら、すごくかっこいいライブだったんですよね。で、P-shirtsのライブを撮ることになった。ライブに通ううちに対バンとかいろんなバンドの写真を撮るようになって、バンドマンの知り合いが増えていって……で、今に至る。

*1:中島伸一氏。現GOAT EATS POEM Vo.

岡安

井上さんは「維新派*2」も長く撮っていましたよね。

*2:1970年に旗揚げした日本の劇団。自らの手で巨大な野外劇場を建設し、公演が終れば自ら解体して撤収するという「scrap&build」の劇団として知られる。2017年解散。

井上

バンドとはまた別に、フリーミュージックや即興のパフォーマンスにも興味があったんです。いろんなイベントに顔を出しては「撮らせてもらえないですか?」って言ってました。思い出深い仕事でいうと、「〈新世界BRIDGE〉っていうハコを新しく作るからおいでよ」って誘ってもらって、2007年に閉店するまで8年間撮らせてもらいました。今では考えられないマニアックな音楽を常にやってるおもしろいハコでしたね。「THE・大阪のごった煮」みたいな。

 

そんなことを続けていた頃、僕の写真展に来た劇団員の方に声かけてもらったのをきっかけに、維新派の公演を撮るようになりました。初めて代表の松本さんにお会いしたとき、「君もこっち側で金にならんことばっかやってんやろ」って言われたのは忘れられない(笑)。維新派がなくなるまでずっと撮らせてもらったんですけど、あの経験はすごく大きかったですね。維新派を撮っていたおかげで、他の人からも撮影に呼んでもらう機会が増えました。

 

そういうふうにやり続けてもう25年くらい。興味あるバンドとかアーティストに自分から連絡をとって撮らせてもらうやり方は、今も変わらず続けています。

維新派「アマハラ」(撮影:井上嘉和)
──

岡安さんはどんなきっかけでライブを撮り始めたんですか?

岡安

私は、大学生のときに音楽メディアでライターを始めたのがスタートです。とにかくライブを見られるならお金をもらえるより嬉しくて、よく記事を書いていました。

井上

それってSMASHとか?

岡安

あ、そうです、まさにSMASHの興行をレポートするメディアです。取材のときはいつもカメラマンさんをアサインしてたんですけど、「自分で撮れたらいいな」「自分ひとりで取材が完結したらいいな」とずっと思ってたんです。あるときアメリカでの取材の機会があって、そのとき初めてカメラを買って、ひとりで取材しようと決めた。それが撮るようになったきっかけです。

井上

じゃあ、そもそもアウトプットありきで撮り始めたんですね。

岡安

そうですね。写真はテキストでは補えないことを伝えてくれるなと感じていて。自分の写真がアウトプットとしてどう使われるのかは、今でもすごく意識しています。

井上

僕はアウトプットの意識があんまりないんですよね。撮ること自体がとりあえず楽しくて、使い方はわりと相手任せ。ちゃんとアウトプットまで意識してるのはすごいなと思いました。

岡安

そうか、考えたことなかった……。

残さないと、豊かにならない

──

おふたりともお金以上に「撮りたい気持ち」を優先する中で、食い扶持を確保することとのバランスをとる大変さがあったのではないでしょうか。

井上

ライブはまあ……お金にならないですよね。僕は家族もいて子どもを養いながらやってるので、ライブに行くたびに妻から「それって仕事?」って冷たい目で見られながら、「いつまでも続けられないのかな」とぼんやり思ったりはしてましたね。

 

あるとき、そんなもやっとした気持ちでライブを撮りに行ったんです。七尾旅人さん、勝井祐二さん、内橋和久さんのギタートリオの即興演奏。撮ってるうちに、「こんないいものが世の中にあって、自分はそれを撮れる環境にあって、もうやめらんないな」って気持ちになっちゃったんですよね。そこでもう一度覚悟を決め直した。とりあえず、撮り続けられる方法を考えていこうと。生活もあるし撮るためには機材が必要だし、お金がいる。だから、他の撮影の仕事もきっちりしながらライブを撮り続ける。

岡安

井上さんの“はしご力”は本当にすごいですよね。仕事のあとで大阪(のライブハウス)行って京都(のライブハウス)行って帰る、みたいな。

井上

仕事を優先させることがあったとしても、ライブを撮りに行けるときはなんとしてでも行きますね。

岡安

同じ音楽業界でも、東京と関西の市場規模はあまりに違いすぎますよね。中学のときから音楽に関わる仕事をしたいと思ってましたけど、私一人食わすことも難しい仕事であるっていうのは結構早い段階でわかってて。

 

私には「ライブを撮り続けよう」と覚悟を決めた瞬間がはっきりあるわけではないんですけど、ずっと会社員をやりながらライブを撮っていたら、お金を稼ぐための写真の仕事も増えてきて、「こっち(写真)にふってもいいんじゃないか」って思えるようになってきたというか。いろんな積み重ねが一定の許容量を超えて、「写真でやっていけるかも」と思ったタイミングはありました。

(C)岡安いつ美
井上

お金にならないのが是か否かの話で言うと、僕にとってライブを撮るのはコミュニケーションの方法のひとつなんですよね。たとえば、売れないバンドマンに「撮影したからお金払って」と言ったら関係性はそこで終わっちゃう。仮想通貨的なものというか、僕はライブを見ることができる、その代わりに写真を提供できる。それがWin-Winになってればいいんじゃないかな。経験もお金と並ぶ価値だと思っているので、その価値がお金を上回っているか、ということだと思います。

岡安

わかります。ANTENNAでも駆け出しのバンドや仕事しながらバンドやってる人を紹介することが多いので、「うちで記事を作るならお金を払ってくれ」とは言いにくくて。ただ、「お互いお金がないからライブ撮影ができません、メディアで紹介もできません」という状況では、今ライブハウスで起きているおもしろいことが何もあとに残らない。そんな状態では、少なくとも私が見ている音楽界隈は豊かにならない。私はそれがすごくもったいないなと思ったんです。

 

残すことが目的というか、残ったことで誰かが知るきっかけが生まれて、次に繋がったり広がったりする。それが大事なんじゃないかなと思ってやっています。私は音楽が好きで、これ以上業界が縮小してほしくない気持ちがすごくあって。それがメディアをやっている理由ですね。

井上

もちろんお金も大事だし必要だけど、稼ぐ方法は別にあっていい。「やりたいことで食わなくてもいい」って言ったら変ですけど、自分の中でバランスが取れていればいい、というのが僕の中での結論なのかな。誰が何と言おうと撮りたいっていう気持ちがあるので。

 

あと僕は、子どもに「世の中にはおもしれーこといっぱいあるぞ」って常に言いたい。自分がやりたいことをちゃんとやって、楽しんでる姿を見せるのは大事かなと思うんです。「大人楽しいぞ」っていうのは見せていきたんですよね。

自分のエゴ丸出しでやっていけばいい

──

そもそもの話になってしまいますが、世の中のすべてが被写体になり得る中で、ライブを撮ることの格別な楽しさってどんなところなのでしょうか。

岡安

私はすごくお客さん気質というか。ただ「ライブを見たい!」という気持ちが強いんです。フォトピットって観客より前でライブを見られる特等席じゃないですか。観客としてライブに行っていた頃から、前にいるセキュリティとカメラマンが羨ましかったです。

井上

たしかに、「客席とステージの境界線にいるのは俺だけ」みたいな気持ちはすごいありますね。カメラマンってオールエリアパスだしね。ライブハウスの裏に行ってもいいし、どこでも出入りできちゃう。

岡安

そう、本当楽しいんですよね。

井上

僕は見たこともない、新しいものを見たい欲が強くて。「知ってる曲の歌詞を覚えて一緒に歌いたい」みたいな気持ちは全然ない。聞いたことも見たこともないバンドのライブのほうが「どんなのやろ?」って気になっちゃう。一体どんな表現をするのか、その現場を一番近くで見られるのがカメラマンだと思ってます。その場に関わる方法としての写真撮影、みたいな感覚はすごくありますね。撮るために行くから、観客としてライブに行くことはほとんどないんです。

岡安

私もです。手ぶらでライブハウスに行くとそわそわしちゃう。

井上

チケット買って行くのが関わり方としては一番イージーですけど、それだとコミュニケーションがあるようでないというか……。僕にとっては写真やカメラって、コミュニケーションのツールであり増幅器みたいなものなんです。

──

「関わる」「残す」方法として、写真というフォーマットでしかできないことはなんだと思いますか?

井上

写真って、一瞬での説得力が一番強烈な表現方法なんじゃないかなと思うんです。僕は漫画が好きなんですけど、ときどき2ページ使った強烈な見開きってあるじゃないですか。写真であの感じを目指したいんですよね。

内橋和久(撮影:井上嘉和)
岡安

私も「写真にしか残せないものがあるな」と実感したことがありました。昔先輩が、フジロックにIncubusを撮りに行ったんですよ。「ちょっとすごいの撮れたわ」って帰ってきて見せてもらった写真がなんというか……とにかく印象的で、「こんなの撮れるんだ!」という感動を教えてもらったんです。その先輩、Incubusの大ファンだったんですよ。だから「この瞬間が間違いなく良い」というアングルやタイミングを心得ていたんだと思います。

井上

映像が「時間の芸術」なら、写真は「選択の芸術」なんですよね。口の開き方ひとつとっても、そこには必ず撮影者の意思がある。カメラマンによって、撮り方も位置もどの写真を選ぶかも変わってくると思うんで。どの現場に行って、どのカメラで、どのレンズで、どの画角で、どの露出で撮るか。技術が上がるほど、選ぶための解像度が細かくなっていきますよね。

岡安

私も「自分で作ったものだな」とはっきり思えるのが写真でした。メディアをやっているといろんな人の写真を見る機会がありますが、個性が強烈に出るなって思います。

井上

自分が撮った中で「これが好きだな」を選び続けていると、その「好き」がどんどん太く硬くなっていく。それがカメラマンの個性になってくのかなって。一言で「きれい」と言っても基準はいろいろあるし、自分のエゴ丸出しで選んでいけばいいのかなと思ってます。

チームプレーが下手なくせに寂しがりやなのがカメラマン

──

自分の「好き」を選ぶことが大切な一方で、写真には常に他者からの評価がつきまといますよね。また、現場に足を運び続けるという体力的な大変さもあると思います。今まで降りずに撮り続けられたのはどうしてですか?

井上

降りるという選択肢を考えたことがない。写真の他にうまくできることも思いつかないし、常に肯定感を得続けられた職業が写真だったんですよね。撮って、見せて、喜んでもらって、また頼まれて。そういうのをずっと積み重ねて自信になっていったというか。撮るのは自分の好きなミュージシャンばかりなので、彼らに何か還元したいし、認めてくれる人に答えたい。

岡安

ダイレクトな仕事ですよね。私はずっと自分の写真に自信がなくて、「私なんかでいいのかな」ってずっと思ってたんですけど、あるときそのせいで私の写真を褒めてくれる人の言葉を信用できないんじゃないかと思えて。そう思っていた自分が恥ずかしくなったんです。もっと上手くなって、もっといい写真を渡せるようになりたいって思いました。目の前にいる、写真を必要としてくれる人のためにもっと頑張れるんじゃないかって。

井上

まず被写体に喜んで欲しいっていうのがありますよね。だから僕は「写真家」という名乗り方はしないんです。職業カメラマンという意識があるから。自分を喜ばせるより、人が喜ぶのを見て喜んでる。自分の作品撮りをしようと思ったこともあるんですけど、作品作るよりライブ撮るほうがおもしろかったんですよね。

岡安

わかります。以前Web制作の仕事をしてたんですけど、たまにお客さんとの距離があまりにも遠く感じる瞬間があって、誰のためにやってるのかわからなくなることがあったんです。写真は顧客までの距離が最小で、自分にもしっかり返ってくる。それが写真の仕事のやりがいだなと。

井上

いいものが撮れても、常に次がある。そこで終われないですよね。撮りたいものも常にある。今まで撮った中で好きな写真はいっぱいあるんですけど、何年も前の写真を「代表作だぞ」みたいに出し続けるのダサいじゃないですか。そこは常に更新できるように頑張りたいです。

 

カメラマンって、まずその場に「いる」ことが大事な表現だなって思ってて。いないと写真も存在することができない。だからまず現場に行く。とりあえず撮る。積み重なって、次に撮るための準備になる。完成形はなく常にバージョンアップしなきゃいけないから、どんどん撮るしかない。

岡安

まさに、初めて会ったときに言われた「たくさん現場に行くといいよ」の話ですね。

 

やっぱり私はいろんな先輩に、写真を続けていく方法というか、やりたいことと上手く付き合っていく方法を教えてもらったなって思います。「部屋の更新のタイミングだし、アイルランドにいる好きなバンド撮りたいし」って言って急にアイルランドに移住しちゃった先輩とか。井上さんみたいに「撮りたいものは撮る、お金を稼ぐための仕事もして写真で家族を養う」っていう人もいる。「そんなやり方あるんだ」っていうのをいろんな人に見せてもらったおかげで続けてこられたんだなと思います。

(C)岡安いつ美
井上

僕はカメラマンの先輩はいないけど、50代、60代のミュージシャンやアーティストがまだ最前線でやってる姿を見ると、表現活動で食ってくことはできるんだなって思えます。それぞれの続け方を見て、「俺もまだいけるな」と。

 

あと、撮ってないと楽しい仕事来ないんですよ。お金にこそならないけど、「ライブを撮ってる人」と認知されるとおもしろいライブの撮影依頼がくる。逆に、好きじゃない仕事ばっかりやってると好きじゃない仕事ばっかり集まってくる。

岡安

何がどこに繋がるかはわからないですよね。最近契約したブライダルフォトの会社から、「ライブを撮ってる人に撮影を頼めるなんてうれしいです」みたいに言ってもらえて。音楽を撮ったことがこんなふうに繋がるんだなと思えました。

井上

ただ、ときどき映像の相談もいただくんですけど、それはどうしても踏み込めないところがあります。チームプレー向いてねえなって思っちゃうんですよ。最初にきっちりプランを考えなきゃいけないこととか、映像の仕事で上に行こうとすると管理能力が問われるところとか、どうしても合わない。

岡安

私はANTENNAの編集長をやっていますけど、今日話してみて「やっぱり向いてないんじゃ?」と思いました……(笑)。でも、誰かと一緒にものを作って影響範囲が広がるのはおもしろいです。

井上

カメラマン、チームプレーが下手なくせに寂しがりやな人が多いですからね。めんどくさい(笑)

岡安

本当に(笑)。一人だと寂しい。だから私はチーム(ANTENNA)と一人を行き来できる形を選んでるのかもしれないです。音楽を残していきたい、でもそれって誰がやるの? と考えたときに、同じ思いを持ったみんなで一緒にやれたらもっと楽しいよねって思うんです。

 

 

トップ写真:東野祥子×ヨース毛(撮影:井上嘉和)

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EDITOR

堤 大樹
堤 大樹

26歳で自我が芽生え、なんだかんだで8歳になった。「関西にこんなメディアがあればいいのに」でANTENNAをスタート。2021年からはPORTLA/OUT OF SIGHT!!!の編集長を務める。最近ようやく自分が興味を持てる幅を自覚した。自身のバンドAmia CalvaではGt/Voを担当。

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