【京都珈琲案内】第3回:おうちカフェの本当の「楽しみ方」京都編

【京都珈琲案内】第3回:おうちカフェの本当の「楽しみ方」京都編

【京都珈琲案内】第3回:おうちカフェの本当の「楽しみ方」京都編

今回は京都を通して、3万円で自分だけのおうちカフェを創る方法についてのお話です。

 

このコラムが縁となり、拙筆のブログを見たという声を多くいただいており、大変ありがたくも恐縮している。そして同時に、「ブログの写真でアップされる自宅スペースが、とても家だとは思えない」という声をよくいただいている。

 

私は自宅をカフェのような設えにして遊んでいる。元々整理整頓が苦手であるのだが、パブリック・スペースのような室内にしたらちょっとは家の中を清潔に保てるのでは、と思ったのがきっかけで、ならいっそ珈琲を楽しむに相応しい空間にしようと、私の自宅カフェ改造計画は始まった。俗にいう「カフェのような空間」になるためには、実際のカフェにどんなモノがあるのか、実際にカフェへ行きあれこれ観察しながら考えるのもまた楽しい。

 

カフェ空間として、スタイリッシュだったり家庭的だったりと様々な趣味嗜好があると思うが、私の嗜好はアンティークであった。となると当然自宅にアンティーク家具や食器を揃える必要が出てくる。アンティーク家具といえばお洒落だけど高価というイメージが強く、実際に値段も高い。また、特にヨーロッパのアンティーク家具は主張が激しく、慎ましやかな日本家屋に置くとどうしても浮いてしまいがちになってしまうので、私はなかなか手を出す勇気が出なかった。

 

だがそんな時、京都にある一つのお店に、私は巡り会った。京都府の南、久御山町に『de naja(ドゥ ナヤ)』というヨーロッパアンティーク家具及び食器を専門とする小さなお店がある。このお店はとある珈琲店関係者から教えていただいたのだが、3年ほど前に初めて訪れた時のあの驚きと感動は今でも鮮明に記憶している。

 

オーナーの三輪さんが年に数回、一人でヨーロッパを巡って家具と食器を買い付け、お店のスタッフの方々総出でリペアして販売している。お店を見回すと、上質のアンティーク家具や食器類が、所狭しと、信じられないような安価で販売されているのである。例えば、左下写真のアンティークのソファ(年代、国ともに失念)だが、重厚な木材彫刻の脚に状態も良好なオール本革で、たった2万円台で購入することができた。このことから、他の家具についても是非想像してみてほしい。これも偏に、三輪さんの「手が届かないと思われがちなアンティーク家具を、少しでも手頃な価格で販売し、喜んで使っていただきたい」という思いからである。装飾も美しく、かつ手が届く価格帯のアンティーク家具と食器に囲まれて、私はここで家具を選びに来るたび、まるで宝探しをしているような気分になる。事実、今では自宅の家具の約8割はここのものとなった。

自宅の本革ソファー
自宅のテレビボードとマガジンラック

今回、焙煎機を置く棚が欲しかったため、de najaを久々に訪問し、特別に写真撮影をさせていただいた。

店の様子
店の様子②

今回購入したのは、写真右の大理石の台付のナイトテーブル(推定で1940年~1950年代のオランダ製とのこと)。これでお値段15,000円だった。ちなみに、左のナイトテーブルも以前de najaで購入したものである。

写真右 今回購入したナイトテーブル

de najaの家具の特徴として、その上質さとリーズナブルさは言うまでもないが、もう一つ特筆すべきは、日本家屋に合いやすい比較的シンプルめなデザインなものが多いということだ。ベタな日本家屋の畳の間でも、近代的な1軒家のダイニングでも、学生が住むようなワンルームでも、ここの家具は絶妙な存在感で、ごく自然に彩りを出してくれる。なお、アンティークのカップ&ソーサーも1,000円前後とお手軽な値段で購入することができる。アクセスが良いとは決して言えない場所だが、アンティークに興味がある方には強くお勧めする。

写真左 筆者 / 写真右 三輪さん

今回購入したナイトテーブル、私は焙煎機の置き場兼カップ棚として使用するが、珈琲を淹れる台として使用したら、それだけで雰囲気のよいカフェ空間となるし、そうした作業台で珈琲をドリップする気持ちはまた格別であろう。ちょっとこの台を利用して、カフェ空間の例を挙げてみたいと思う。

スペース例

美味しい珈琲をドリップするためには、『ドリッパー』『サーバー』『ドリップポット』『コーヒーミル』は最低限欲しいところであるが、これらを揃えても総額は30,000円かかっていない。de najaでは、ナイトテーブル(水に濡れても問題ない大理石の台付のもの)を販売していることがしばしばある。自分の部屋の片隅に、ちょっとこんなカフェ空間ができるのも、また一興ではないだろうか。

 

また以前寄稿した通り、京都には本当に多種多様な珈琲店・カフェが存在する。おそらく、自分にとって心地よいと思うお店はきっと複数見つかることだろう。つまりはその各々のカフェの持つ、自分に心地よいと思う雰囲気や可愛い雑貨・家具をうまく取り入れ、自分だけのカフェ空間を自宅でプラモデルのように組み上げていく、そんな遊びを充分すぎるほど楽しめる要素が京都には備わっているのだ。

 

しかし、最後に世のおうちカフェブームについて一言。最近のおうちカフェブームは、お洒落な雑貨や家具に囲まれ、それなりにちゃんとした珈琲器具を使うことでカフェ的な雰囲気を感じよう、というところのみに重きを置いているような気がする。確かにそういう面も大事だが、お金を払えばすぐ手に入るレベルで終わっていては、それはただの表面的なカフェ風であり、本当におうちカフェを楽しんでいると言えないと私は思う。

 

個人的にやはりおうちカフェでは「美味しい珈琲を淹れるにはどうしたらよいか」に興味を持って、自分なりの珈琲の淹れ方を磨き続けてほしい。もちろんプロでもない人間にとっては禅問答のようなものだから、初めは全然分からないし、うまくいかない。でも、その「わからない」をぜひ楽しんでほしい。自分だけのカフェ空間を創りだすという、あてもない、でも可能性に満ち溢れたわくわくする旅の始まりなのである。またそんなときにこそ、旅の道標となるべく、美味しいカフェをいろいろ訪ねてみたり、ともすれば店主の方に話を伺ってみたりすると、カフェに対する見方や楽しみ方もこれまでとまた随分と変わってくるはずだ。実際、私はそのようなことがきっかけで、珈琲店の店主と懇意になり、ネルドリップやラテアートについて学び、そして技術を教えていただくようになり、現在に至っている。

 

ああでもないこうでもないと思いながらもやっていくと、だんだんと自分の中の「こうかな?」が生まれてくる。そこを楽しむ自分によって、家具や食器、空間がだんだんと自分のために活きてくる。全然うまくいかない未完成な部分の試行錯誤、一見徒労や無駄に見えるその過程の「遊び」と「創意工夫」にこそ、むしろ本当のおうちカフェの魅力があるのではないかと、私は思っている。

 

今回、京都の珈琲店の紹介をするに至らなかったが、また近いうちに京都の珈琲店について寄稿する予定なので、今回はこの辺で筆を置く。

自宅の珈琲スペース①
自宅の珈琲スペース②奥の棚、テーブル、カップの一部は、de naja以外の店で購入したものです。お、ギターを弾いているのは友人です。

今回ご紹介したお店

店舗名

de naja 久御山店(ドゥ ナヤ くみやまみせ)

住所

京都府久世郡久御山町野村北浦25-1

営業時間

11:00 – 19:00

定休日

金曜日・月曜日(祝日の場合は翌日休業)

TEL

090-9613-8512

※買い付けなどの都合上、臨時休業が多いため、訪問時には電話で問い合わせることをお勧めします。

WRITER

植島 潤
植島 潤

京都のロックバンド、「閑話休題」のヴォーカル兼ギター。2017年12月、Ba.袴田有紀と「ふたりのうたとガットギターとベース」というアコースティックバンド編成で約2年ぶりに活動再開。珈琲に結構くわしく、素人ながら自家焙煎やネルドリップ、ラテアートもこなす。日々の珈琲屋巡りやおうちカフェの様子を記録したブログは、京都を中心とする珈琲店や雑誌社などから一目置かれているらしい。でも当方はバンドのほうで注目されたいの。

【閑話休題Official Website】http://kanwakyudai.com
【京都珈琲案内】http://ueshima.blog.jp

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EDITOR

岡安 いつ美
岡安 いつ美

昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。

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