川端安里人アイスランド日記 4~6days

川端安里人アイスランド日記 4~6days

川端安里人アイスランド日記 4~6days

はい、みなさんお待ちかね (?) 脳内映画まみれ男によるアイスランド旅日記vol.2です。旅日記前にふと思い出したことがありまして、皆さんのアイスランドのイメージってどんな感じですかね?ビョークとシガーロスを生んだ音楽文化豊かな国?氷と溶岩の国?アイルランドは知ってるけどアイスランドって何?って人もいるかもしれませんね。

 

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自分のアイスランドのイメージの根源についての話なんですけど、確か高校の頃です。『春にして君を想う』という1991年のアイスランド映画をVHSで借りてきてみたのが今でも強烈に残っています。物語的にはアイスランド版『東京物語』みたいな話なんですけど、後半不思議なシーンがあるんです。

春にして君を想う

主人公の老人が船に乗っていると、遠くの岩の上に裸の女の人らしきものがいて、手を振っている。それで、主人公の老人が船頭にあれは何をしているのかと尋ねると「ただの幽霊だよ」と船頭が答える。別にホラー映画でも、ましてやファンタジー映画でもない映画に唐突にそのシーンが入ってきたんです。この映画、全編アイスランドの絶景で撮られた映画でして、なかなかうまく言い表せれませんが、そういう超自然的存在をあっさり受け入れることができるむき出しの自然のある国というのが最初の印象でした。その後シガーロスにはまったり、他にも色々素晴らしいアイスランド映画や文化に触れて憧れを募らせて今にいたるわけです。

さて、旅日記vol.2はそんなアイスランドの風景への情景を再燃させた映画『インターステラー』で大々的にロケされた氷河をめぐる旅です。

インターステラー

03月13日

天気はあいにくの雨。それでもブリザードよりはマシ。ただし、なんと致命的なミスでカメラのレインカバーを忘れるという凡ミスをしでかしたために、雨天での強行撮影しかできない。ちなみに、レイキャビクから目的地であるヨーロッパ最大の氷河ヴァトナヨークルまでは1日中車を運転すれば簡単に着くことができる。翌日は氷河内にある氷の洞窟探索のツアーに申し込んでいるので、今日中に前乗りしておく作戦だ。

さすがに、アイスランドでの運転も少しは慣れてきているが、未だに対向車線と行き違う時はハラハラする。国道1号線という道がアイスランド一周のための大きな道なのだが、村を通過する時以外の大体の制限速度は90KM。しかも、ガードレールはないのが普通の道で片側一車線が普通で、車がそう通らないのが唯一の救い。途中せるヤランズフォスとかいう滝や、ヴィークという町に立ち寄ったりしながら西から東へ移動する。

 

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ちなみにフォスはアイスランド語で滝の意味らしく、相変わらずそれまでの無人地帯が嘘みたいに観光地には人が集まっている。ただでさえ霧雨がすごいのに滝のせいで湿度が100%あるんじゃないかと思う。地平線がなんとか見えるがそれ以外は何も見えないというような風景が続く中で聴く『永遠と一日』のサントラは格別で、個人的にはすごくテンションが上がるんだけれど、K君はテオ・アンゲロプロスの映画とか見てないので語れないのは残念。ただし曲は気に入った模様。

ヴィークに行って驚いたのは教会の形が『春にして君を想う』に登場する教会に酷似していたこと。てっきりここがロケ地かと思ったけれど、違ったみたいだ。近くにはよく似た形の教会が幾つかあった。

 

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ホテルは少し離れた荒野の中にある秘密基地みたいなところで、掃除係のはげかけたおにいさんからは完全にゲイカップルと勘違いされて、頼んでいないダブルベッドの部屋に案内されたけど、フロントにいた爽やかイケメンにツインがいいと頼むと快く承諾してくれた。K君とは仲良しだがそういう関係じゃないし、彼は結婚している。

03月14日

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昨日の梅雨みたいな天気が嘘みたいに晴れる。アイスランドは一日に四季があるとか誰かが言っていたけどまんざら嘘ではないみたい。今日はK君待望の氷の洞窟ツアーの日。ヨークルサウルロンとかいう氷河湖の隣にあるカフェで待ち合わせ。

待ち合わせまでの道中、ささやかな、本当に小さなくだらない自分の夢が叶う。マカロニウエスタンのサントラを聴きながらアイスランドの荒野をドライブすることだ。具体的には『続・夕陽のガンマン』、『DJANGO 続、荒野の用心棒』、『アヴェ・マリアのガンマン』の三曲だ。いや、まぁ、アイスランド全然関係ないけど、ぬかるんだ荒野で聴きたかったんだからいいじゃん。

 

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自分は人見知りなもんで元々ツアーとかそういうのは苦手な方なんだけど、氷の洞窟はツアーじゃないと無理だと納得した。どでかいジープみたいな車で道無き道を進まないといけないのだ。運転手のお兄ちゃんは「川じゃねぇよ、道だよ」みたいなテンションで溶け始めてぐちゃぐちゃになった道(?)を数十分かけて進んでいく。普通車じゃ無理だよね。

いろんな映画のロケ地になっている場所なので、運転手兼ガイドのお兄ちゃんの話も自然とその話になった。「『インターステラー』の外惑星俺の職場だよ」とか、「ジャッキー・チェンが2週間前までここにいて、氷河を泳いでいた」とも言っていた。『カンフーヨガ』という中国、インド合作の映画らしい。カンフーとヨガでどうしてアイスランドで極寒中水泳になるのかわからないけど、還暦超えてそんなことしてるジャッキーはやっぱりすごい。

 

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氷の洞窟は超大自然の中にある。夏に溶けた氷河が地表を伝って流れ出たのが冬になって凍り、洞窟になる。だから毎年場所や長さが変わるらしい。

ヘルメットとアイゼンを付けて氷の洞窟に向けて歩き出す。氷河という人間が生きていけない環境のはずなのに相変わらず人は多い、今年はもうすぐオフシーズンになるらしい。意外と小ぶりだった。今年は特別に小ぶりなのか、ツアーで案内しやすい (なんとか車で来れる) 場所にあるものが小ぶりの氷河なだけなのかはわからない。

 

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ツアーも終わり、氷河湖ヨークルサウルロン近辺に戻ってくる。せっかくだからと氷河湖を半周ほどするとまさに絶景が待っていた。野生のアザラシなんてそう見る機会ないよね (ただの黒い粒にしか見えないので写真はないです) 。

氷河周辺探索で疲れているのでその周辺の宿に泊まる。

03月15日

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ホテルのビュッフェを食べて早々とフヤットルサウルロンという氷河湖 (ここもヴァトナヨークルの一部) を見に行く。車を止め、20分ほどの雪道ハイキングで着くそこは『バットマン ビギンズ』でバットマンになる前のブルース・ウェインが刀の訓練をした場所だ。自分は普段靴は一足しか持たず、履き潰したら新しいものに買い換えるというジャック・リーチャースタイルで生活をしているのだが、今回の旅は特別にスノーブーツを買ってきている。買ってきてなかったらここや氷の洞窟は行けてなかっただろう。道中意外と普通の靴やジーパンで歩いてる人 (まぁ、自分もほとんどジーパンですが) を見かける。雪と氷でぐちゃぐちゃにならないのかと少し心配になる。

実は14日に自分たちは結構重大な決断をしていた。それは何かというと、今回のアイスランドの旅では北のほうに行くのを諦めたのだ。アイスランド人は国内の移動を飛行機ですることが多い理由がわかる。すべての町が陸の孤島なのだ。しかも、晴れてきているので到着時より少しはマシになってきているがまだまだ封鎖されている道路は多い。本当は北にある『プロメテウス』のオープニングで宇宙人がDNAを巻き散らかす滝に行きたかったのだが、そこに行くと帰ってこれなくなる可能性があるので仕方ない。

というわけで、僕たち二人はやってきた道をゆっくりと西へと戻ることにした。南側の行けてない場所を回ることにしたのだ。

 

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道路はまだまだ雪が残っている部分もあるが、行きに来た時から変化していて、「こんなところあったっけ?」と思う箇所もある。霧で見えなかった風景が見えるとこんなにも違うのかと素直に感動する。自分が映画以外で感動するって滅多にないんですよ、ほんと。

霧が晴れたのでアンゲロプロス映画のサントラはかけなかった。

 

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賽の河原のような石が積み上がっている場所に車を止めた。前回は霧か雪のせいで見えなかった場所だ。なんでも大昔の人が氷河に向かう時に安全祈願で積んでいった石がいまだに残っているらしい。タイミングが悪い。そして「次の町まで100キロか~、近いな」とか言い出す自分たちの慣れ具合が怖い。

 

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ヴィクの近くにあるレイニスクヴェルビ (通称ブラックビーチ) に立ち寄る。従姉妹からの事前情報だと観光客がたまに高波にさらわれる危険地帯らしい。確かに彫刻みたいな崖に気をとらわれたりしていると、たまに足元まで波が来そうな時がある。気を付けないと……。

近くのゲストハウスにチェックインする。結構無機質な感じだった今までの宿と違って、アットホームな雰囲気で温かみがある場所だ。ゲストハウスのお姉さんがコーヒーとケーキを出してくれて、あとからやってきたロシア人とオランダ人のカップルと会話をしていると日が暮れ始めたので晩御飯を買いにヴィクまで行く。ゲストハウスからコンビニが10kmがザラの世界なので、基本的に早めに行動をするが、ヴィクからの海の眺めがマジックアワーで最高の状態だったので写真を優先した結果食事処は閉まり、晩御飯はサンドイッチになった。

 

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夜、月明かりの中頑張って写真を撮ってみるとそこにはオーロラが写っていた。

 

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WRITER

川端 安里人
川端 安里人

1988年京都生まれ
小学校の頃、家から歩いて1分の所にレンタルビデオ屋がオープンしたのがきっかけでどっぷり映画にはまり、以降青春時代の全てを映画鑑賞に捧げる。2010年京都造形芸術大学映像コース卒業。
在学中、今まで見た映画の数が一万本を超えたのを期に数えるのをやめる。以降良い映画と映画の知識を発散できる場所を求め映画ジプシーとなる。

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