【シネマジプシー】アメリカ、ディープサウスぶらり旅3日目

【シネマジプシー】アメリカ、ディープサウスぶらり旅3日目

【シネマジプシー】アメリカ、ディープサウスぶらり旅3日目

見てきた映画は数知れず。本人すらも分からない。(1万本を越えてから数えるのをやめたから)人呼んでシネマジプシー・川端安里人。彼から「旧友に「映画を撮ろう」と誘われて、ロケハンでにアメリカへ行ってきた」と、アンテナ編集部に連絡と原稿が届いた。目に映るのものがこれまで見てきた映画とリンクする彼が、南米で見てきたものはどんなものだったのでしょうか。

 

全9日分の記録をお楽しみください。

【シネマジプシー特別編】アメリカ、ディープサウスぶらり2日目の記事はこちらから

世界一長い橋と湿地帯

ゲストハウスは、ホストも他の客もいい人ばかりだったった。朝方は少し湿度が高いけれど、京都で育って来た自分からしたら屁でもない。夜の間BBQで賑わっていた中庭も朝は誰もいなかった。念願のアメリカにやって来たという充実感と、アットホームなゲストハウスの居心地の良さから上機嫌でプカプカとタバコをふかしていると、裸足の女の子がやってきて「吸いすぎは良くないよ」と注意された。意外と面と向かって言われることは少ないので、少し戸惑う。

せっかくルイジアナにいるからという理由で、昨日教えてもらった湿地帯ツアーに行くことにした。とにかくルイジアナという所は湿地帯が多い。まるでジブリアニメのような『ハッシュパピー』という愛すべき映画のことを少し思い出す。もし、ルイジアナの湿地帯に興味があるならこの映画がオススメだ。

 

ニューオリンズから北東へ車を走らせ、パールリバー野生保護区にあるハニーアイランド湿地帯に向かった。ここはディズニー映画史上初のアフリカ系少女、かつアメリカ国籍のヒロインが主人公の『プリンセスと魔法のキス』の舞台になった場所だ。

 

予約をしていなかったのだが、結構な頻度でボートが出ているので、あまり待たずにクルーズに出ることができた。幼少期から祖父に連れられこの湿地帯のことを知り尽くしているという船長さんが案内役だ。そういう役作りなのか、素なのかわからないが訛りがすごかった。

 

「この辺りにゃワニがうようよおるから、柵の外にゃぁ手ぇ出さんといてくれよな!あいつらぁ人様の御手手とソーセージの見分けがつかねぇんだ」

 

ボートはどんどん奥深くへ進んでいく。道中は川沿いにボート小屋でナマズ釣りに勤しむ人たちや、カヌーに興じる人、ハリケーンの被害を受けたボロボロの廃墟が目に付いた。

こんなところで一夏過ごしてみたい、なんて他愛もない話をOくんとしながら、写真を撮っているうちに人家のない湿地帯の奥地までやってきていた。進むのをやめた船長が、木の枝に刺したソーセージで川面を叩くとワニが食いつく。よく見ると遠くからワニがソーセージ目当てに向かってきている。ホラー映画なら間違いなく転覆してやばいことになるパターンだ。

そこからさらに進み川幅が狭くなると野生のアライグマにも遭遇した。船長がマシュマロを差し出し、周りの子供たちはキャッキャと歓声を上げている。この辺りになるとまさに原生林という感じで、幻想的かつ少し不気味な雰囲気も漂っている。

 

スワンプシングという怪物の伝説がこの辺りにあるらしく、その手の話が好きな人には結構有名な噂話だ。ちなみにこのスワンプシングを元に、DCコミックが『怪人スワンプ・シング 影のヒーロー』という映画を作っている。『エルム街の悪夢』や『スクリーム』で知られるウェス・クレイブン監督作品だ。なんで沼にいる泥のモンスターがヒーローになるんだよとは思うけれど、まぁそこはアメコミなのでご愛嬌ということで……。ちなみに現在再映画化を検討中の模様。

 

アイアンマンのいるマーベルでは『巨大怪物 マンシング』という名前でこっそり映画化されていて、こちらは人々を恐怖に陥れる悪役としてスワンプシングが登場する。この映画でプロデューサーをしたケビン・ファイギという人は、この後アベンジャーズ系の映画を大成功させた超やり手なので、意外とこの映画はB級パニックホラーとしては秀作だったりする。もしかしたらレンタルビデオ屋の片隅にあるかも……。

湿地帯を存分に楽しんだ僕たちは当初の目的地だったテキサスに向け、車を走らすことに。ショートカットも兼ねてポンチャートレイン湖コーズウェイという、ギネスにも載っている世界で最も長い橋の一つを走ることになった。

約38kmという破格の長さの橋上には、休憩所も給油地もない。ただひたすらに走るだけだ。どこまでも続いているように見える橋を進んでいくうちに不思議な感覚に襲われる。

 

デジャヴュかな?そうではなかった。この橋はイタリアのホラー映画『ビヨンド』で主人公とあの世からの案内人が出会う象徴的な橋そのものだった。とりあえず『ビヨンド』のサントラをかける。無駄にプログレ感漂うこのBGMはやたらかっこよく、知る人ぞ知る名曲だと思っている。思わぬ聖地巡礼になり、O君も大喜びであった。

 

思っていた以上に湿地帯で時間を食っていたので、この日はニューオリンズとヒューストンの間にあるジェニングスという街のモーテルに泊まることにした。

4日目の記事はこちらから

【シネマジプシー】アメリカ、ディープサウスぶらり旅4日目

WRITER

川端 安里人
川端 安里人

1988年京都生まれ
小学校の頃、家から歩いて1分の所にレンタルビデオ屋がオープンしたのがきっかけでどっぷり映画にはまり、以降青春時代の全てを映画鑑賞に捧げる。2010年京都造形芸術大学映像コース卒業。
在学中、今まで見た映画の数が一万本を超えたのを期に数えるのをやめる。以降良い映画と映画の知識を発散できる場所を求め映画ジプシーとなる。

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EDITOR

岡安 いつ美
岡安 いつ美

昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。

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