【シネマジプシー特別編】アメリカ、ディープサウスぶらり旅5日目

【シネマジプシー特別編】アメリカ、ディープサウスぶらり旅5日目

【シネマジプシー特別編】アメリカ、ディープサウスぶらり旅5日目

見てきた映画は数知れず。本人すらも分からない。(1万本を越えてから数えるのをやめたから)人呼んでシネマジプシー・川端安里人。彼から「旧友に「映画を撮ろう」と誘われて、ロケハンでにアメリカへ行ってきた」と、アンテナ編集部に連絡と原稿が届いた。目に映るのものがこれまで見てきた映画とリンクする彼が、南米で見てきたものはどんなものだったのでしょうか。

 

全9日分の記録をお楽しみください。

【シネマジプシー特別編】アメリカ、ディープサウスぶらり4日目の記事はこちらから

悪魔のいけにえBBQ

もっとこの街で過ごしたかったなと思いつつも、早々と車に乗り込みブレナムを後にした。この日は行く場所が決まっていたからである。殺人鬼映画の開祖、制作から45年近く経った現在でもカルト的な人気を誇る伝説の映画『悪魔のいけにえ』のロケ地に行くのだ。

「テキサス=やばい奴が多い」なんて噂を聞くのは7割この映画のせいだと、筆者は思っている。だって『悪魔のいけにえ』の原題は『テキサス電動ノコギリ大虐殺』だよ。その強烈なタイトルや、チェーンソーを振り回す大男の殺人鬼・レザーフェイスを知ってるという人は、ホラーファンでなくても少なくないだろう。

 

1時間ほど車をオースティンの方へ走らすと目的地にたどり着いた。その名もザ・ガスステーション。今はもうガソリンスタンドとしては営業をしておらず、ホラー映画グッズショップ兼BBQコテージになっているらしい。

到着して驚いたのは、雰囲気はおろか外見が全く変わっていないことだ。映画の光景が頭をよぎる。ご丁寧に主人公一行が乗っていた同型車が停めてあるニクい演出付きで、手書きのBBQ看板が見るからに怪しい雰囲気を盛り上げている。

 

興奮を隠しきれず中に入ると「ハロー」と出迎えてくれたロブ・ゾンビ似の店員さん。「やぁ、どこから来たんだい?」と他のお客さんも気さくに話しかけてくる。日本から来たことを伝えると、この日はヨーロッパやオーストラリア、世界中からお客さんが来ているらしい。平日なのにとロブ・ゾンビ似の店員さんもびっくりな様子である。店内には『悪魔のいけにえ』Tシャツをはじめ、ありとあらゆるホラーグッズがぎっしりと並べられていて、ここがホラーファンの聖地であることをひしひしと感じた。

 

「ホラー映画好きに国境はないよね。共通の話題で、この伝説の場所で盛り上がれるんだ」

 

笑顔でそう話す店員の表情がピュアすぎて、正直ちょっと怖かったのは内緒だ。

店の片隅にあるソファには『悪魔のいけにえ』のヒッチハイカーと『ハロウィン』のマイケル・マイヤーズが仲良く(?)座っている。

 

 

ただのホラーグッズを売っているお店ではなく、このお店はBBQ屋さんなのでBBQサンドを頼んだ。出てきたのは肉厚の大きなバーガー。なんの肉かは聞かなかったけれどすごく美味しい。そしてコーヒー無料というサービス付き。こりゃたまらん。

ザ・ガスステーションは、映画好きとしていくらでも長居できるほど居心地の良い場所だったが、次の目的地に向かうことに。ガソリンスタンドの次といえば家だ、そう殺人鬼一族の本拠地であるあの家。

ガスステーションから車を2時間ほど走らせた場所に、映画の舞台のとなったその家がある。持ち主が何回か変わり以前は廃墟同然だったが、現在は『グランドセントラルカフェ』というレストランカフェに生まれ変わっていた。

 

遠くからでもあの家だと一発でわかった。それくらい『悪魔のいけにえ』の家は象徴的に映画内で描かれているし、良い家である。玄関から覗くと家の構造は映画の時とそのままで、今にも奥の廊下からレザーフェイスが出てきそうだ。最高!ここが主人公が飛び出して脱出したあの窓か、なんて話をしていると他にも写真を撮りに来た人がやってくる。定休日なので中には入れなかったのが残念である。

『グランドセントラルカフェ』を後にし、地元の名店『ソルトリックBBQ』へと向かった。アンテナではおなじみオースティンの近くだけれど、車がないとまず行けない辺鄙な場所だ。しかし、店に着くとそれまでの無人地帯は何処へやら、すごい混みようで驚いた。

使い古された直火焼きの厨房からは美味しそうな匂いが漂ってくる。散々『悪魔のいけにえ』ワールドに浸った後だからグロく見えなくもないけど……。チャンス・ザ・ラッパー似のお兄さんにオススメを聞くと、リリックを刻むようにテンポよく教えてくれた。言われた通りに頼んでみたバイソンのリブは絶品だった。できることならまた食べたい。

 

そうこうしているうちに日が暮れ始めた。O君曰く、サンアントニオに向かう道中世界一でかいガソリンスタンドがあるらしい。え?世界一でかいガソリンスタンドなんて見て面白いの?と思ったが、その予想は大きく外れることになった。

ニューブラウンフェルズにあるガソリンスタンド兼ショップ『Buc-ee’s(バッキーズ)』に到着すると、あまりの大きさに2人のテンションは鰻登りに上がった。なんと120台(!)同時に給油できる圧巻の大きさである。脳内にあったガソスタのイメージが完全に吹き飛ばされた。強いていうならガソスタ会のゴジラだ、でかい=すごいなんて小学生のような理屈だけれど、いざデカすぎるものを目の前にすると人は圧倒されてしまう。それがたとえガソリンスタンドでもだ。

 

看板にも描かれている可愛いビーバーのキャラクター・バッキー君はご当地人気キャラで、店内には様々なグッズが売られている。お土産はここで買うしかない!と盛り上がったのだが、今のテンションで買い物をすれば300ドルくらいポンと使ってしまいそうなので、近くのモーテルに泊まって頭を冷やして翌朝出直すことにした。バカみたいな話だけれどそれくらい盛り上がったのだ。

WRITER

川端 安里人
川端 安里人

1988年京都生まれ
小学校の頃、家から歩いて1分の所にレンタルビデオ屋がオープンしたのがきっかけでどっぷり映画にはまり、以降青春時代の全てを映画鑑賞に捧げる。2010年京都造形芸術大学映像コース卒業。
在学中、今まで見た映画の数が一万本を超えたのを期に数えるのをやめる。以降良い映画と映画の知識を発散できる場所を求め映画ジプシーとなる。

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EDITOR

岡安 いつ美
岡安 いつ美

昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。

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