7月1日
どんな朝食が出てくるのか気になっていたから、今日は宿で朝食をお願いた。前日に時間を聞かれていて、ちょっとのんびりしすぎかなと思ったけど9時にお願いした。ラマダーは完全に生活時間がずれるため朝は遅く、完全にその思いは杞憂だったのだ。ちなみに朝食を用意してくれたスタッフのかなさんは寝巻きで用意をしてくれたあとに、すぐにもう一度寝た。
一食40DHで、四角いのがモロッコ式のパイみたいなものらしく、塩っけがきいていて美味しかった。これにレモンジャム、イチゴジャム、オリーブオイルのうち好きなものを付けて食べる。わりと味はしっかりしているので、僕はそのまま食べるのが気に入った。かなさんがコーヒーにミルクが必要か聞いてきて、欲しいと言うとわざわざ買いに走ってくれた。ラマダーン中は牛乳がほとんど売っていないらしく、探すのが大変なんだそうだ。
朝食も食べ終え宿を出る支度をすませると、10時頃に宿を出発できた。宿を出て50mほどの所で変なおっさんに声をかけられる。無視をするべきだったのだが、運悪く写真を撮っていたタイミングで話しかけられてしまい話を聞くような形となってしまった。
「今日はスペシャルな日だ」
「 ベルベル人の技術が云々」
「スーク (観光客向けの商店街) では高いから商品は買うなよ」
「とりあえず俺が良い所に連れて行ってやるからバイクの後ろに乗れ」
う、胡散臭すぎるでしょ!絶対嫌だ!「僕は歩くのが好きなんだ、それに今日は1時間しか時間がないから」と伝え無視して歩き始める。その後ろを付いてくるおっさん。袖まで掴んでグイグイ引っ張ってくる。ここまで来ると怖い。なので着いて行くふりをして曲がり角で曲がらずそのまま走って逃げることにした。こうして無事逃走。こやつのせいで完全に日和った僕は1度宿に戻ることになってしまった。
その後にはまた運悪く変な子供に絡まれる。バイクに2人乗りをしていて、並走しながらずっと声をかけてくる。「どこへ行くんだ。行きたい場所があるなら案内するよ。20DHでどう?」完全に無視をするがそれでも着いてくる上に、こいつらにも袖を引っ張られてうんざりして振りほどくと「Fuck you!」と叫びながら離れていった。写真を撮りたかったけど、カメラがひったくられそうで向けられなかった。モロッコ人絡んできすぎ。
そんなこんなで朝一から随分と消耗してしまう。細い路地は観光客が少なく絡まれる確率が高いので、まずはフナ広場の方へ行くことに。フナ広場にはヨーロッパの観光客が多く、モロッコ人も観光客慣れをしているのでそこまで執拗には絡まれないからだ。しかしひとつ疑問なのは昨晩からかなりの人に声をかけられたが、ほぼ100%の確率で「日本人か?」と声をかけられる。以前スペインへ行った時にはほぼ100%中国人か韓国人に間違われていたのに不思議なものだ。どうやって見分けているんだろう。
頻繁に声をかけて来るモロッコ人に早くも嫌気がさしてくる。モロッコ生まれマラケシュ育ち、暇そうなやつは大体客引きだ。そして暇そうなやつはそこら中にいる。カメラか!カメラぶら下げてるからか!それとも顔か!顔があかんのか!とりあえず顔もカメラもどうしようもないので、現地人の服を着てごまかすことにした。
イスラム教徒がよく着ているあれだ。ゆったりして涼しそうだし、とりあえずあれを買おう。適当な店に入り値段を聞く。これ350DH?高いよ!もっと安くしてよおっさん!え、この下履きも付ける?セットで450DH?値段上がってるじゃないか!というかそれ普通に両方買わせたいだけじゃん!じゃあこっちのやつは?300DH?高いなあ……200DHじゃないと買わないよ。それなら他所で買うよ。230DH?それならもう220DHにしよう。決まり?じゃあそれで。
マラケシュには値札という概念がない。そのため買い物をするには逐一値段の交渉をしなければいけないのだが、彼らは旅行客と見るや死ぬほど吹っかけてくる。実際僕達ビジターには相場なんてわからないものだから、ある程度の所で納得するしかない。少し買い物をした印象としてはそもそも旅行客にはあまり値下げする気もないようだ。うーん、思ったより消耗するなこれ。せめてもう少し英語が話せれば。
とりあえず宿に戻り着替えることに。さすがにお昼時なのでスタッフも起きていた。今日はモロッコ生活半年のあかねさんという方がいた。服を買った話をしていると、値段はちょっと高いかな、くらいらしいので許容範囲。ただ僕が買ったのはモロッコではなく、サウジアラビアの方で主に着られているカンドーラというもので、モロッコのタイプはフード付きだそうな。
着替えると随分と涼しくて驚いた。ワンピースみたいに下半身が開いているので、風が通り涼しい。着替えてから出ると心なしか声をかけてくるやつが減った気がする。それでも3分の2くらいだが、少しでも減るならなにもしないよりましである。お腹も減ってきたところであかねさんに美味しいと教えてもらったタジンの店へ行くことに。
フナ広場に面しており、席はテラスのみ、愛想の悪いおっさんが3人のいかした店だ。早速鶏肉のタジンとコーラを注文する。まず出てきたのがパン。その後に突き出しでチリソースのかかったオリーブがでてきた。これが最高に美味しかった。独特の酸味とピリっとくる辛みで無限にパンが食える。ご飯との相性もよさそうだ。酒が飲みたくなるが、店にはない。後で聞いた話によると、モロッコでは酒が飲める場所はかなり貴重で、わざわざそういった店を選ばなければ酒はないようだ。
そして肝心のタジンだが、これも実に美味しかった。肉厚な鶏肉が底に敷いてあり、柔らかでジューシー。味はオリーブがきいており少し酸味がある。かためのパンと実によく合う。昨日食べたクスクスと段違いの満足感。
腹ごしらえがすんだ所で、フナ広場を大通りに向かって歩く。馬車が大量に待機していたり、ミント屋が並んでいたりするが、屋台が広がっていないと静かで、それだけで違う場所のように感じる。それでも色々な民族楽器が鳴り響き賑やかだが、夜のどんちゃん騒ぎには敵わない。
クトゥピアと言うマラケシュ最大のモスクがある。高い建物が少ないためなにかと目印になる建物で、周囲はきれいな公園になっている。案の定物乞いが沢山いた。小さな子どもが物乞いをしているのを見ると切なくなったが、それと同時にもう少しきちんと働くべきでは?との疑問が。今朝あった子どもといい、そんなことをしないといけない程この国にはそんなに仕事がないんだろうか。もう少しこの国について調べてから来るべきだったかな。
皆さんスークはご存知だろうか?スークとはの小さな店が集まった商店街であり、ガイドブックによるとマラケシュへ来たなら必ず寄れとのことである。主な取り扱い品目としては、タジン鍋や陶器、バブーシュ、衣類、スパイス、革、絨毯 (激高ぼったくりの宝庫)、アラビアンランプ、アクセサリーが多い。これが狭く暗く汚い道に所狭しと並んでおり、確かにこれは見応えがある。しかし同時にやはりと言うべきか客引きが多い。立ち止まろうものならすぐにヤられる。とりあえず足早に歩いて行くのだが、道も狭くかなり複雑なためまるで迷路のようだ。そのくせスークは結構広いのと、似たような店がいくつも連なっており、すぐに迷って非常に脱出に苦労した。
モロッコでは写真を撮るのが非常に難しい。女性に関しては「ヒジャブをして、大部分を隠しているんだからいいじゃないか」、とも思うんだけどもちろんアウト。お店の写真を撮ろうとカメラを向けただけでアラビア語でなにか怒鳴られる。生活のためにやっているわけで、見世物ではないのだから当たり前なんだけどその辺りでもかなり神経を使う。
スークでは結局なにも買わず、歩き疲れ宿に帰還。朝早くから出歩いていた疲れもあり、出歩くなと言われた19:30-21:00までを寝てすごし、夕食を食べに行くことに。フナ広場に美味しいイワシのフライを出す店があるらしく、それを食べに行くのだ。フナ広場の屋台にはそれぞれ店の番号が振ってあり、それで見分けが付けているらしい。ベルベル人のおっさんがやっている、噂の美味しいイワシフライのお店はno.4とのこと。余談だけど実はこの番号にはあまり意味はなく、名乗ったもの勝ちらしい。だからno.200のお店もあるが、実際にはお店は200もなかったりする。
しかしフナ広場を30分もウロウロしているのにno.4の店が見当たらない。ラチがあかん!とその辺のおっさんに聞いてみると、ラマダーン中だから休みだよ!とのこと……残念。時間もなく屋台の客引きがうんざりだったので、昼間に行ったレストランへ。今度は牛肉のタジンにした。
ミントティーは基本的に激甘である。汗をたくさんかくこの国では糖分の摂取が大切らしい。この甘さも1日歩いて疲れた身体にはよく染みる、美味しい。ミント系のアイスが苦手な僕でも結構平気で飲めた。ミントティーはどこでも飲めるので来られた際はぜひ飲んでみて欲しい。最初はその甘さにびくりするが、段々と癖になってくる。
フナ広場では毎日お祭りみたいな馬鹿騒ぎをしている。本当にすごいエネルギーだと思うし、これに魅入られる人がたくさんいるのは理解できる。人種も色々で、ご飯を食べてるだけで色んなやつが物を売りに来た。煙草を持ってくる中国人、変な顔した木彫りの猿の置物を持ち歩くアフリカ人、変な仮面を押し付けようとするエジプト人、謎の光るおもちゃを夜空に向かって投げ続けるアラブ人。しかしあの空に投げる変なおもちゃ、5年前くらいにバルセロナでも見たぞ……。
最後に、今日かわいいトランプを買ったので欲しい方いたら先着1名にプレゼントします。いわゆる読者へのプレゼントってやつの試みです。数はひとつだけですが、反応があればまた別のものを買ってプレゼントしたいと思います。欲しい方は、タイトルをトランプ、名前と連絡先を添えてkyoto_antenna@gmail.comまで。 今夜中の3時なんだけど、まだオモテで子どもの声が聞こえる……ラマダーン恐るべし。
続く