堤、ジブラルタルを渡る Day9

堤、ジブラルタルを渡る Day9

堤、ジブラルタルを渡る Day9

7月7日

昨晩はシャネルとアンドリューに朝が早いことを伝え、早めに就寝した。そのお陰か緊張か、1度は4時頃に目が覚めるも二度寝をして起きたのは6時だった。あと30分は眠れたのだけど、ここで寝過ごすとさすがにヤバいのでシャワーを浴びて準備をすます。昨日のうちにほとんど身支度をしていたので準備はすぐに終わった。部屋を出る時シャネルがベッドから手を振ってくれ、ほっこりとした気分で宿を出れた。

 

【今日の予定している移動】

 

0900 タンジェ発フェリー

1200 タリファ着 (乗船1時間+時差1時間+サマータイム1時間のため)

   タリファ→アルヘシラス バス

1500 アルヘシラス発電車

2030 マドリッド着

 

呼んでいたタクシーは遅刻しないのだろうか、と少し心配していたのだが約束の時間より10分も早く到着。無事にタンジェ港へ向かって走り出した。客引きの多さや、無邪気なモロッコ人にほとほと嫌気がさしていたのだが、今更ながらこの砂漠の国が名残惜しくなる。また縁があれば来ることもあるのだろうか。さようなら砂漠の国。

 

途中タクシーの運ちゃんが周囲に海も見えない、なにもないような住宅地でタクシーを止めた。すわ、ここで降ろされるのか!と身構えたが運ちゃんは小便をしたかっただけらしい。最後までドキドキさせてくれる国だモロッコ。

 

45分ほど走り港へ到着。タクシー代は150DHなのだが、僕が200DHを渡すと、そうやらお釣りがないらしく「ちょうど寄越せ」と運ちゃんが言う。小銭はほとんど持っておらず、100DHとありったけの小銭23DHを渡すと、「それでいい」とのこと。この時はこの国の適当さに救われた形となった。

 

実はタンジェという港はふたつある。新タンジェ港と旧タンジェ港だ。新タンジェ港はスペインのアルヘシラスへ、旧タンジェ港はアルヘシラスの西にある、タリファという街へ船が出ている。旧タンジェ港⇆新タンジェ港間も、アルヘシラス⇆タリファ間もそれぞれ無料シャトルバスが走っており、どちらも時間は約30分ほど。ようはスペインかモロッコ、どちらでシャトルに乗るかというだけの違いだ。僕の場合は朝にあまり時間がないため、宿の兄ちゃんが勧めてくれた近い旧タンジェ港からのフェリーに乗ることにした。

タンジェの白い街が見える
フェリー会社2社が並ぶ

ちなみに僕が乗るのは写真左のFRSの高速船だ。「赤いイルカが目印だ」と、昨日宿の兄ちゃんが教えてくれた。わかりやすくてよい。高速船のため若干値段は高く400DH。港で換金もしてくれるみたいで、持っているDHを全てユーロに換金した。ここから先は船の中もDHは一切使えないらしい。そのままテキパキと出国表に記入をすませ、出国検査も通過。空港に比べると随分とあっさりしたものだった。中国人がよく偽造パスポートでここからヨーロッパへ入国していた、というのも頷ける。簡素だが、免税店もあり、ここから国が変わるのだという実感をわかせてくれた。

売っているのはモロッコ雑貨
船のチケット

船に乗りこむと、クルーは掃除夫以外はみんなスパニッシュだった。船に乗っている客もヨーロピアンが多い。早速船の中を探索、めちゃくちゃ広くてきれいだ。客も多くなく、余裕があり贅沢な空間に感じられる。売店はともかく、バーやラウンジまであった。朝食を食べていないので、そこでマフィンとコーラを購入。なんとコーラはちゃんと冷えていた。やったぜエスパニョール。ただしコーラ1.8ユーロ、マフィンも1.8ユーロとかなり高く、物価の上昇を痛感させられた。それともあれか、これはいわゆる船料金か。

船内
トイレがスペーシー

船は遅れることが多い、とは聞いていた。予定時刻の9時をまわっても全く出発する気配がない。30分ほど待たされてようやく出発。もしジブラルタル海峡を船で渡ることがある時は、スケジューリングには余裕を持った方がよいと思う。ひどい時は1.2時間遅延することもあるらしい。この辺は本当に日本と感覚が違う。

 

船の旅は1時間もかからなかった。その間はのんびりと外を眺めてすごす。海が緑色に透けていて、きれいに見えた。ヨーロッパ大陸、アフリカ大陸この辺り一帯がどちらもリゾート地になるのも十分頷ける。

 

船を降りるとそこはヨーロッパになる。こちらにも簡単な入国審査があったが1分で終了。荷物検査も簡単なものだ。タリファにはまだモロッコ人やムスリムが多いが、それでもだいぶ雰囲気が違った。そもそも壊れかけの建物などはなく、街行く人もみな穏やかな雰囲気だった。タリファはリゾート地なのだから尚更かもしれない。港を出てすぐにアルヘシラス行きのバスに乗る。ここで船のチケットを提示する必要があるようなので、チケットを捨てないでいてよかった。

バスはとてもきれい
窓ガラス越しのタリファ
牛がちゃんと柵の中にいることに感動した

アルヘシラスの港へ到着。腹も減ったがまずは駅の場所の確認、チケットの確保を先にしたい。街の雰囲気はのんびりとしている印象で、客引きもいない。その代わりお店もあまり開いていなかった。シエスタの時間だろうか?スペインもゆるい国だ。

多分ホテル、塗りかけ?

駅までの道はわからなかったが、バックパッカーたちが全員同じ方向に歩いていたのでとりあえず付いていってみる。10分ほど坂を上るとこじんまりとした駅が見えた。中の電光掲示板を眺めた感じだと電車の本数が圧倒的に少なく、マドリッドまでは1日2本しかない。駅の中はやたらきれいで、モスクや教会を彷彿とさせられる。まずはチケットを購入。駅員がお札を数える作業を待つこと5分、ようやく対応してくれた。約75ユーロ、目ん玉飛び出そうになるような値段だけど仕方がない。

ユーロの交通費は馬鹿にならんなあ

出発の時間までまだ1時間以上ある。とりあえずご飯を食べたいので周辺を適当にうろつくと、ハンバーガー屋を発見。もう店を閉めると言っていたのだが、無理を言ってハンバーガーを売ってもらった。ポテトは売り切れていたのでハンバーガーを単品購入。ベーコンバーガーが3ユーロ、コーラが1ユーロ。よかった、さっきのコーラはやはり船プライスのようだ。そしてやっぱりちゃんとコーラは冷えていた。それにしても日本を出てからコーラばかり飲んでいる気がする。完全に守りの選択肢だね。ハンバーガーはベーコンをその場で焼いてくれているのでカリカリで美味しい。

ベーコンバーガー

食事を済ませ駅に戻ると人がめちゃくちゃ増えて並んでいる。みな荷物が大きく、家族連れが多い。バカンスだろうか?ちなみにスペインの駅構内は、電車が来るまで入れない。しかも入るのにチケットの確認と荷物のX線検査がある。テロ対策なんだろうけど、随分と物々しいなと思った。そして後ろの老夫婦はX線検査に引っかかっていたのだが、何故か「心配するな」と言わんばかりにおじいちゃんがおばあちゃんに接吻をしまくっていた。

構内
どんくらい効果あるんやろか

電車は一車両の長さが短く、中はゆったりめの作りだった。今日乗るのは”RENFE”という国鉄で、スピードはそんなに出ない。新幹線みたいなやつは”AVE”と言って、また別のものだ。しかし日本の鈍行なんかに比べてかなり快適だった。指定席でコンセント付き、映画もやっていてイヤホンのサービス、飲み物や食べ物も買える。ここから5時間のんびりとスペインを北上してマドリッドを目指す。オリーブ畑が連なり、牧歌的を絵に描いたような景色の連続だった。次に来る時は車で走りたいものだ。しかしiPhoneではうまく写真に撮れない。かなりのストレスを感じる。

旅人にはありがたい
二重窓なのでどうやってもiPhoneケースが写る…

RENFEの中で谷崎潤一郎傑作選を読み終える。個人的に谷崎は”少年”と言う話が好きだ。あの年頃の性を性とも認識していないにも関わらず、なんとなくいけないことをしている、という背徳感がよく伝わる。一度知ってしまった自分はもう性に対してそこまでの背徳感を得られないだろうなあ、とも感じて少し寂しくもなる。

 

予定通り無事にマドリッドへ到着。20:30にも関わらずまだ随分と高い位置に太陽があり驚く。ここからは友人のいる駅まで地下鉄で移動しなければならない。友人のホテルは”プリンシペピオ”というところにあるらしい。僕のいるアチャータ駅からはだいぶある。

 

6号線の環状線に乗り換え、無事に約束の21:30に着くと思っていたが、半ばくらいまで駅を過ぎたところでいきなり電車が逆走をはじめる。ひとつ戻った駅でまたプリンシペピオ行きに乗り込むもまた逆走する雰囲気……遠回りをして5号線で行くことにし、約束を少しすぎた21:50になんとかプリンシペピオにたどり着く。

マドリッドの地下鉄

無事に合流できたのでホテルの横にあるレストランで飯を食う。久しぶりに食べた米、パスタは最高に美味しかった。また快く泊めてくれた2人にも感謝。

スペイン名物生ハム
パエリャ!これはいつ食べても最高
左・自称インターポールに狙われている倉田君 右・ベーウエ

続く

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