- 01 連休があるなら遠くへ行きたい
- 02 訪れて感じたロシアの魅力
- 03 ロシアの食は、食材も料理も多様でハズレがない
- 04 信心深いロシア人と、並列する宗教建築たち
- 05 音楽はクラシックから、最近のヒットソングまでをこよなく愛する
- 06 たった一度で、すごく好きな国になった
連休があるなら遠くへ行きたい
「今年のGWは大型の連休である」
このことを耳にした時点で、ぼんやりと「どこかへ遠出しよう」ということだけは決めた。「航空券が高くなりそうだから早めにチケットも抑えねばならぬ」、と理解はしていたものの気がつけば新年も明けて2月。すでに航空券の値段は大幅にあがり、限られた予算の中では移動できる場所も限られる。
おおよその予算は¥80,000、選択肢として残ったのはロシアかインドネシアだった。せっかくの10連休、どうせ行くなら普段行けない時間のかかる場所がいい。そう思い、今まで一度も縁のなかった寒い国への渡航を決めた。
日本人が大手を振って10連休を取れる機会などそうあるわけではなく、そうなると必然的に安いチケットはトランジットが必要になる。取れたチケットはなんとモスクワまでおおよそ30時間超、中国で二度の乗り継ぎが必要となる便だった。乗り継ぐ場所は瀋陽とウイグル。以前よりウイグル自治区には興味があったし、寄れるならちょうどいいと思っていたが、そんなに甘いものではなかったということは後述したい。
また本旅レポートの【後編】では盛大に『アベンジャーズ エンドゲーム』のネタバレがある。嘘みたいだが、本当の話だ。公開がちょうどGWだったこともあるが、今回の旅で感じたことの多くがこの映画の中で映像として昇華されていたことに感動を覚えたためだ。そのためまだ映画を見ていない人や、ネタバレを避けたい人は終盤はすっ飛ばして欲しい。
インドの旅同様、写真と音でロシア・中国の旅の一端を感じていただければ幸いだ。
訪れて感じたロシアの魅力
ロシアと聞くとどんなイメージが湧くだろうか?
なんとなくヨーロッパっぽい町並み、そしてとにかく寒いこと。あとはシベリア鉄道、ボルシチやマトリョーシカといった特徴的な響きを持った言葉たちに、きわめつけはソ連時代の少し薄暗いイメージ(西側のカルチャーに毒されすぎだとも思うが)。そんな想像される方が多いのではないかと思う。僕ももちろんそんな一人だ。そんな僕が、今回ロシアを訪れて感じた最大の魅力は、文化的土壌の懐の深さだ。複数の文化が共存し、うまくエッセンスを残し混ざり合っていた。
ご存知の方も多いかとは思うが、ロシアの正式名称は “ロシア連邦共和国” であり、85の連邦と、22の共和国を抱える共和制および連邦制国家だ。ロシア人の他に190を超える少数民族が暮らしていて、多くの共和国ではそれぞれの国内での多数派を占め、自治を勝ち取っている。そして思い出して欲しいのだが、ロシアの国土は西は東欧から東は極東日本の直ぐ側まで伸びていて、その面積は実に広大だ。
僕が今回訪れたのは、首都モスクワとヴラジーミル州にあるスーズダリ、タタールスタン共和国の首都カザンの3都市となる。タタールスタンはモスクワから東へ約800-900km、トルコ系のタタール人が多く住む街で、ケバブを売っていたり、街の人の顔が濃かったり中央アジアに近い様相をしていた。またスーズダリは古き良き中世ヨーロッパの雰囲気を残す小さな古都だが、文字を持たなかったというスラヴ民族の文化もまた色濃く残す。そういった様々な民族や文化を、古くは紛争や戦争を交え国境を変化させながら入り混ぜてきたことが、土壌の豊かさを作り上げた一因だろう。その豊かさを「食・宗教・音楽」の3つの切り口から紹介したい。
ロシアの食は、食材も料理も多様でハズレがない
まず、その文化的な土壌の深さを感じさせるのが “食” だ。僕が初日からドハマリしたのがペリメニというロシア式の水餃子なのだが、これがまた美味しい。サワークリームをつけて食べるこの食べ物、餃子ほどこってりしていないのに、味はしっかりついている不思議な感じ。気分によってお昼にスナックとしてもディナーとしても食べられることもあり、四六時中つまんでしまう一品だ。
中身の餡はベーシックなものは豚や牛の肉だが、同じ料理がタタールスタンなどの内陸へ行けばラム肉などがメインになる。また海が近い場所ではサーモンやエビ、蟹などの海産物が餡の材料に。その組み合わせは無限と言えるだろう。土地によってはスープに入れて食べるなど、味つけや材料のバリエーションがとにかく豊富、どこへ行っても飽きずに楽しむことができた。
ペリメニ以外の話もしておくと、ドーナツの原型になったポンチキは絶品だった。シンプルな揚げドーナツだが、ポンデリングに近いモチモチの食感がたまらない。種類も豊富で、ほとんどの料理にはずれない。海外でたいてい食に困る自分としては飽きなかった国は珍しい。ひとつ後悔をしていると言えば、名物らしきうさぎ肉を食べておけばよかったということか。