「文化の入口はどこだ?」とは?
カフェでコーヒーを飲んでふぅっと肩の力を抜くひと時、ついつい人は店内に佇む本棚や装飾に目を向けてしまうもの。本から新しい知識を身につけたり、装飾品から違う国の文化を感じ取ったり……気付かないうちに様々なカルチャーに触れている。カフェはそんなカルチャーとの「入口」をつくってくれるものだ。
海外の文化を体験すると、風習や習慣の違いに気付き、自分の中の常識をアップデートしてくれる。そうして得た新しい価値観は、自分の人生をより豊かなものにしてくれるだろう。ふと、京都の街の中でも、視点を変えれば新しいカルチャーに出会うことができるのではないだろうか、と考えた。そこで京都の「海外文化を感じるカフェ」にインタビューを行い、カフェを入口に「どんなカルチャーに触れ、何を受け取るのか」について模索した。まだまだ遠くに行くことが難しい状況の中だからこそ、「京都にいながら世界を旅する」そんな視点で、自分の身の回りを見てみよう。
訪れたのは、河原町丸太町に2017年に渋谷区神山町から移転オープンした、ポートランド流の朝食を味わえるカフェ〈MEMEME COFFEE HOUSE〉と、1930年の創業以来、当時のパリのカフェのようなコーヒーとフランスパンを学生に提供する〈進々堂 京大北門前店〉。一見、特性の違う二つのお店だが、その共通点は店主が影響を受けた海外文化がルーツになっていることにある。それはお店の外観や店内の雑貨などのハード面だけではなく、店主のマインドや接客サービスなどのソフト面もだ。
私が1,2年前に旅行した時、ポートランドのカフェでスタッフが楽しそうに働いていた姿が印象に残っている。お店に通う近隣の人も含めてお店が好きな様子が伝わってきて、居心地のいい空間だった。私のような旅行客にも変わらず接してくれて、ポートランドという街のあたたかさをカフェを通じて感じられた気がした。パリでは、テーブル担当のスタッフが接客を卒なくこなしてくれ、必要以上に気を遣われず自由に過ごすことができた。ポートランドとパリでは家で朝食を食べる代わりだったり夕食後の腹ごなしの一杯を楽しむ場所として、カフェが日常の一部に溶け込んでいることが私にとっても発見であった。そんな日常のそばにある海外カフェ文化をぜひ京都の街中で体験してみてほしい。
MEMEME COFFEE HOUSE
京都市上京区上生洲町210番地
8:30〜15:00
TEL:075-211-5880
店主の晴航平(はれる こうへい)さんは学生時代にポートランドへ留学経験があり、〈Ace Hotel〉や〈Sweedeedee〉で受けた最高のサービス体験がお店の原点だ。特に「等身大の自分で、楽しく働く」というポートランダーから教わったマインドは、今もお店を営むうえで大切な指針となっている。以前、渋谷区神山町に自分の好きを詰め込んだカフェ&バー〈MEMEME〉をオープンさせた時は、自分にもお店にも、そしてお客さんにも完璧を求めてしまい、好きではじめたはずのカフェの仕事を楽しめなくなっていったと言う。人に任せる部分を作った結果、自分が好きなことだけに集中できるようになり、等身大の自分で楽しく働くことができるようになった。人の手が入ることで予定調和ではない新たな発見があることも楽しんでいるそうで、「いつまでも新鮮に感じるし、他のカフェが閉まってたら自分のお店に来ちゃいますね」と、3年経つ今もこの場所が一番好きなお店であることは変わらないのだという。
〈MEMEME COFFEE HOUSE〉のオープン時間は8:30〜15:00と朝が中心だ。ポートランドでは一日を気持ちよくはじめるために朝の時間を大切にしていて、朝食をカフェでゆっくり食べて過ごすこともカルチャーになっている。メニューは、近隣のお店から仕入れたソーセージやバゲットを使った特製のプレートとサンドウィッチに、お気に入りの豆で淹れるコーヒー。またコーヒーは、11:00までは好きなマグカップを選んでおかわりすることもできる。日本にもコーヒー一杯の値段でトーストとゆで卵が付いてくる喫茶店のモーニング文化があるが、出勤前の慌ただしい中の一コマであり、コーヒーをおかわりしてゆったりと好きなことをして過ごす豊かな時間とは縁遠いと感じる。